東京国際映画祭2012の観客賞の表彰式と受賞作品を鑑賞した。
賞の発表前にリストアップされた作品の題名を一覧したときに、
「フラッシュバックメモリーズ3D」という題名が目に入った。
3Dという文字を見ただけで、娯楽作品的で受賞はないなと思ったのだが、
その作品が観客賞を受賞したと発表されて、違和感を感じた。
3Dというと映像の奥行や迫力を出すために使われるのが一般的だが、
この作品ではレイヤーとして使い、異なる時間軸を多層的に表現しているところが目をひく。
3Dに対する既成概念を改めなければいけない。
交通事故で脳に障害を負ったアボリジニの楽器ディジュリドゥの奏者GOMA(日本人男性)を
追った作品で、過去の記憶を失っただけではなく、
事故後の記憶もなかなか定着しないという非常に困難な症状を抱えながら、
いかにして彼は再びディジュリドゥを手にし、ステージに戻ってきたのか。
障害に立ち向かうGOMAの強さと、それを支える人々の温かさなどが、
演奏ライブの様子を映しながら、重ね合わせる形で、過去の映像として流れる。
GOMAは事故後なくした記憶を取り戻そうとあがいていたが、
ある時「これからを生きよう」という姿勢に変わり、そのメッセージが観るものに希望を与えてくれる。
松江哲明監督も「東日本大震災後、GOMAさんのその姿勢は支えになった」と振り返っている。
港区民ということで観る機会が得られたことに感謝。