かまきりのカマ透きとおる殺意かな 真
絵本作家の美原紀華氏は大阪府立北野高等学校の後輩(何年後輩かは、本人の許可を得られそうもないので伏せておく)である。その著書に「ずっと、らりるるれれ 花になったかまきり」芳賀書店、美原紀華:作/マーシャ・サリエ:絵/渡部謙:朗読、がある。
花かまきりという、花そっくりの形に自分の姿を変化させた昆虫に、思いつづける意志の力を結びつけることで、現代に生きる私たちが失いつつある何かに再び目を向けることを語った、まさに大人のための絵本といえる。読み終えた後に実在する昆虫であることを知らされて、自然の懐の広さに感嘆せざるを得なかった。画像の中央の花びらのように見えるのが、花かまきりという本当に実在する昆虫なのである。花と間違えて飛んできた蝶などを餌としているらしい。
厳しい大自然のなかで生き残ろうとする力(これを上掲の俳句では人間の思惑を含んだ「殺意」と置き換えたが、かまきりにとっては、もっと純粋なものであろう)――その強い意志の力でみずからの形を環境に応じて変化させた花かまきりとはまったく対照的に、あくまで自分の存在を中心に考え、自分の周囲の環境を自分の都合のいいように変えていく(建築という行為はその最たるものだろう)のが人間という生き物であり、その大きな違いに、私たちは何かを感じずにはいられない。「かまきり」というちっぽけな昆虫に「殺意」という人間臭い言葉を敢えてぶつけることで、そのあたりの両義性を表現しようと試みたがどうだろう。