東大寺の二月堂や三月堂を訪れたあと、若草山の麓を辿ると春日大社に着く。
ただ、横から入る感じになるのが残念だ。一の鳥居から本殿までのアプローチを辿りながら、お参りする気持ちを整える過程を省いてしまうのは体験的にはもったいない気がした。
境内に入るとまず目を引くのが、樹齢約1000年といわれる幹周り9mの御神木の大杉だ。
その横に別の種である幹周り3mある樹齢約600年の柏槙(ビャクシン)が斜めに延びて直会殿(なおらいでん)の屋根を貫いて立っているのに驚かされる。
少しずつ成長する自然木を建物に取り込むことの難しさは想像を超えるものがある。
切らずに共生するという姿は、自然に神を見出す日本人の心を表しているといえる。
以前、このブログでも取りあげたフランク・ロイド・ライトの代表作ともいえるFalling
Water(落水荘)でも、樹木の扱いに別な手法の工夫が見られる。
裏側のエントランスのパーゴラで手前から4本目の左側の壁に取り付く部分が細い樹木をよけて曲がっているのがよく見るとわかる。
同じような部分を拡大してみる。ライトの手法は、建築を樹木と縁を切って建てている。
一般的にはライトのように縁を切って接触しないほうが、お互いを生かしやすい。
私が自分の設計で樹木と共生を図らねばならないとしたら、春日大社の手法は
取らないだろう。雨漏りのことが気になって、とても私の手には負えない。