今年の夏休みに、なら燈花会(ならとうかえ)を見ることが出来た。例年8月上旬に奈良公園一帯で開催されているろうそくの祭典である。期間中は世界遺産に囲まれた奈良公園一面にろうそくを並べ、幻想的かつ神秘的な雰囲気が演出され、古都・奈良における夏の風物詩として定着している。
猿沢の池辺りで燈花会を見る前に、明るいうちに興福寺の国宝館で阿修羅像を見ることにした。
この仏像も私の大好きな仏像のひとつだ。見る角度や光の当たり方によって表情がガラッと違う不思議な像である。ぽっちゃりした仏像が多い中で、美少年を思わせる顔立ちは現代的でもある。
興福寺は度重なる火災での焼失や明治初頭の廃仏毀釈で壊滅的な影響を受けたため、まだ復興途上なのだ。
五重の塔は、高さ50.8mあり、京都の東寺の五重塔に次ぐ日本で2番目の高さなのであるが、回廊で囲まれた法隆寺などと違って、広々とした奈良公園の一部に建っている感じなので 高さをそれほど感じない。
19:00のロウソクの点火の時間はまだ空がうっすら明るい。猿沢の池の周りや、先ほどの興福寺の五重塔がライトアップされて闇夜に浮かび上がってくる。
ろうそくの使用本数は開催当初は一日当たり約1万本だったものが、現在では約2万本を使用する迄になり、ろうそくも通常のパラフィンを使ったフローティングキャンドルだったものが、何年か前に自然環境に優しいパーム油脂製になり、万が一鹿が口にしても安全な自然食材を使った物に変更したそうだ。昼間に奈良公園で、鹿せんべいを与えようとして多数の鹿に囲まれて泣いていた幼子がいたのを思い出した。